2011年10月7日金曜日

SAINT JAMES の 「OUESSANT:ウェッソン」


人には大なり小なり悪癖があり、まったくの私事ながら私には突然丸刈りにする(しかもかなり短く)という悪癖がある。別に髪型なんて自由にすればいいじゃないかとお考えの方々は、なんで丸刈りが悪癖なんだと思われるかもしれないが、実は私、先天的にガラの悪い顔だ。しかもヒゲ付き。ワイシャツ着用だと間違いなく“お務め”帰りになっちゃうこの状況を、ちゃんとお勤め帰りに収拾してくれるアイテムが、今回紹介するSaint Jamesの“バスクシャツ”だ。Saint Jamesは、フランスの写真家ロベール・ドアノーが撮影した画家パブロ・ピカソの写真【Les Pains de Picasso】(ピカソのパン)で、ピカソ自身が着ていたのはここのシャツだというエピソード(注>このエピソードの真偽をフランス本社にまで問い合わせたが、結局確認できなかった。)でも有名なフランスの老舗メーカー。88年に公開されたフランス映画「グラン・ブルー」がきっかけで、日本でも再注目された感のあるバスクシャツだが、そのせいか春夏のイメージが強い。しかし、同じくバスク地方で生まれたエスパドリーユ(靴底が編まれた縄でつくられた靴)などと共に、今年も根強い人気のマリンコーデに組み込むことによって、充分初秋を楽しむことができるアイテムだ。


一般にバスクシャツと言われる、いわゆるボートネックのカットソーは、その名の通りスペインとフランス両国に跨がったバスク地方で19世紀頃から同地方でつくられるようになったマリンセーターがその原型になっている。このマリンセーターとは、防寒着というよりも甲板作業用の作業着であり、ジャージやスウェットに近い使われ方のものだった。そして甲板作業が、落水や遭難の危険が多い作業だったため、救助の際に視認性が高いことから、今日のバスクシャツにも受け継がれているモチーフ、“ボーダー”を採用することになった。現在バスクシャツをつくっている主要なメーカーの中で最も歴史が古いSaint Jamesだが、老舗なだけあって、このボーダーのバリエーションも多く、なにより原型に忠実な物作りをしている。丈夫なのだ。生地も分厚く、薄手の帆布みたいな手触りで、しっかりと縫ってある。今回紹介しているウェッソンというモデルに至っては、なんと購入後10年以上経った現在でも、外に着ていけるクオリティを充分保っているのだ。(先の写真でピカソが着用したといわれている、同社のNAVALというモデルの方は、若干生地が薄い)ただし、生地が硬い(分厚い?)分、馴染むまでには時間がかかる。つまり着倒して、洗濯して縮ませ、また着倒す、を繰り返す必要があるのだ。ここらへんは、若干キツめのサイジングで購入し、時間をかけて足に馴染ませていくJ.M.Westonの靴や、洗濯縮みを利用して身体になじませる(shrink-to-fitね)リーバイスのよう。逆に言えば、時間をかけて自分好みの1着に育てる、という楽しみ方が魅力、ともいえるのだが、カットソーとしてこれは本当に珍しい。普通、地肌に直接着るカットソー、特にシャツの場合、肌にあたった時のゴワゴワ感を軽減する為になるべく細い糸で生地を編むため耐久性を犠牲にせざるを得ない訳だが、このシャツは洗いざらしが気持ちいい。(本当にすごく気持ちいい。なぜだろう)もちろん、気持ちいいとは言ってもthree dotsのようなリュクス感のある肌触りではないが、なんというか太陽の光をしっかりと生地が吸ってくれているのがわかる肌触りなのだ。


気づいてみれば、Saint Jamesにしても先述のJ.M.Westonにしても、すべてフランス企業だが、そもそもフランスって言う国は、すべからく「時間をかけて馴染ませる」が受け入れられる土壌があるなと感じる。フランスタバコの代表格GITANEにしても、フランス以外で飲んでいる人をほとんど見かけない(あくまでも私見ですが)リキュール、パスティスにしても、最初っから「これ大好き!」って言う人の方が少ないんじゃないかと思うものが多い。なのに、気づけば自分の中の「これじゃなきゃダメ」リストに知らず知らず食い込んでいるのだ。そういえば、前述の「グラン・ブルー」にしても、公開後、世界中で大ブームを巻き起こした映画であるにも関わらず、カンヌのオープニング作品として発表された時は酷評の嵐で興行収益も惨澹たるものだったらしい。最初は個性全開、強烈な印象を与えつつ、時間が経つにつれて優しさと包容力をみせて唯一無二の存在にのし上がるというこの技、思い返せば、フランスを代表するモテ男としてピカソと並び称される、セルジュ・ゲンズブールの得意技だったはず。そう考えるとピカソにしてもゲンズブールにしても、輝かしい女性遍歴を歩むフランス男は皆、ビビッドな個性と、長く楽しめる(楽しませる?)人間力を併せ持っているらしい。ガツガツせず、ときにシニカルに。このカットソーに袖を通して、そんな大人の余裕を見せれば、もしかしたらピカソのように「女性を惹き付けすぎるのは僕の悪癖」なんて言える日が来るかも?

2011年3月4日金曜日

klattermusen の「SKIDBLADNER:スキッドブロドナールジャケット」



IKEA、VOLVO、H&M、エリクソン、ハッセルブラッド。この世界的に有名な5つのブランドにはひとつの共通点がある。業種の全く違うこの5社、実はどれもスウェーデンの企業だ。他にもノーベル賞で有名な火薬メーカー、ノーベル社や、ヨーロッパ第2位の電器メーカー、エレクトロラックスなどを擁している。車好きの方にはSAAB、お酒好きな諸兄にはアブソリュートウォッカなども耳に親しいのではないだろうか。また隣国フィンランドやデンマーク、ノルウェーとともに北欧デザイン(正しくは“スカンジナビアデザイン”というようだ)の一翼を担う国で、議会で使用する書類ですら驚くほどのデザインが施されている。北欧デザインというと、ユニークな形状と素朴だが洗練されたカラーリングを思い浮かべてしまうが、スカンジナビア半島におけるデザインの本当の目的とは、機能美とシンプルさから生み出される使いやすさの追求なのだそうだ。

そう考えると、今回紹介するクレッタルムーセンのスキッドブロドナールジャケットは、間違いなく北欧デザインの生み出した名品だ。フロントを斜めに走るジッパーが印象的なデザイン(着てみると、更に角度がついているように感じる)だが、これはファッション面からのアプローチというよりも人間工学に裏打ちされた機能重視のギミックであるらしいし、他にもRECCO社の雪崩救助ビーコンタグ(広い意味でのリフレクターのような働きをするらしい)が当然の様に内蔵されていたりと、ハードな使用環境を想定したコンテンツとアイディアが詰まっている。また、非常に軽く、伸縮性に富んだ素材でありながら撥水性も実現しており、同ブランドのアイコン的アイテム“エイナリーダ”のようなコットン系ファブリックにこそ及ばないものの、蒸れ感を外に排出する能力は、他のブランドの同系モデルに比べても出色の出来だ。クレッタルムーセン(なんて覚えづらい名前!)は1984年に発足したスウェディッシュブランド。スウェーデン語で“山ネズミ”というその名の通り、登山を中心とした、まごうかたなきアウトドアブランドだ。オーナー自らミシンを踏んで(今はこんな表現をしないかもしれないが)縫い上げたものを、実際に様々なアクティビティで何十回もテストし、納得したものしかリリースしないというこだわりのブランドは、一方で環境に対する配慮が強く、ゴアテックスを一切用いないことでも知られている。(どうやら製造過程で大量の炭素系排出物を出すようだ)すべてのプロダクトが人間工学に基づいてデザイン(登山用だけに当然だが)されていて、元々ザックメーカーからの出自であることから、ウェアの他にザックへの支持も高いブランドだ。国内での価格が非常に高く設定されていることもあって(現地の2倍近くに設定されている!)数年前までは知る人ぞ知る、という位置づけだったようだが、前述のエイナリーダや、ダウンジャケットのムーニンなどのモデルで人気に火がついて、日本国内での認知が上がった形だ。

このブランド、日本国内ではなぜかおしゃれ街着系でのニーズが高いようだ。確かに若干ショート丈でタイトなシルエットであることも街着への応用を加速する。いつものマウンテンパーカーなどの代わりに使うと、かなり斬新な印象を与えるコーディネートに仕上がるのだ。それだけにこのアイテムに限っては、いつも着ているものより明るめのカラーに挑戦してみることをお勧めしたい。イエローやレッドのスキッドブロドナールをチョイスして、これからの季節ならパラブーツの白いデッキシューズとかALIFEのスニーカーなどとあわせると、キレイ目でひねりの効いた着こなしに仕上がるはずだ。マリメッコのような鮮やかな色合いとSUUNTOのような緻密な機能美が共存するこのアイテムで、冒険する心を忘れない大人な春カジュアルをあなたもいかがですか?

2011年2月26日土曜日

THE NORTHFACE purple label 「ダウンジャケット」



「ツイードなんて、買って直ぐ着るものじゃないよ。3年くらい軒下に干したり雨ざらしにして、くたびれた頃着るんだよ。」白洲次郎の言葉だ。白洲次郎とは、戦後日本の繁栄をその豪腕で支えた人物。ジーンズを初めて履いた日本人だったとか、あのマッカーサー元帥を叱り飛ばした唯一の日本人だったとか、彼の伝説には枚挙の暇がない。キ○タクや明石○さんまが憧れているなんて言う話も聞くし、奥さんとの新婚当初の夕食にカジュアルな服装で現れて「ネクタイもせずに失礼」とさらりと言ってのけるなど、とにかく洒脱な人だったようだ。ケンブリッジ大学を卒業し、見事なオックスブリッジ英語を操る人物だったという彼が、若い時にツイードの母国で培った、素材に対する正しい距離感が冒頭の台詞を裏打ちしている。実はそもそもツイードって、イギリスでは実用服の素材なのだ。

その、実用性にあふれたツイード素材のなかでも最高峰の“ハリスツイード”をガッツリ使用したのが、

今回ご紹介する「THE NORTHFACE purple label」のダウンジャケットだ。ここのアイテムのほとんどが、ほぼ限定モノと言っても良いほどのレア度であるなか、更に出色の入手困難ぶりを誇る(?)
このトリプルネーム(THE NORTHFACE×nanamica×Harris tweed)のダウンジャケットは、本当につくづく品のいいカジュアルアイテム。前回ご紹介したMSPCのバッグに使われたツイードは知性を表現していたが、このダウンジャケットでは育ちの良さと大人なカジュアル感を表現している。こんなことが可能なのも、ひとえにツイードの持つ表情の豊かさゆえだ。以前にご紹介したカナダグース同様、極地用のマスターピースアイテムを多数生み出してきたnorthfaceが、数多くの海外アウトドアブランドとのコラボレーション実績のあるジャパニーズブランド「nanamica」と共同で、「街着としての解釈を盛り込んだアウトドアウェア」を提案しているこのライン。ストリートからの支持はある意味で異常なほどの高さだ。英国発信らしいアンダーステートメント(奥ゆかしさ、抑制の利いた、とでも訳すのが良いだろうか。ブリティッシュトラッドには欠かせない概念だ)溢れる服地で、その気になれば氷点下4、5度あたりまでの対応が可能な機能性を包み込んでいる。これは決して本格的な極地や山岳仕様ではないが、そのかわり、この服の持っているトラッドとビビッドの絶妙のバランスは、この服が究極の街着仕様であることをあなたに教えてくれるはずだ。

物事の出自に明るいということは、時にそれ以上の価値を醸し出すものだ。大人なら世の中に詳しくなるのは必然だが、敢えてそれ以外のこと、例えば音楽や芸術、自動車やファッションのような必然でないものの出自に明るい人と出会ったとき、本当の豊かさについて考えさせられることがある。冒頭で白洲が言った言葉、実は世界的なデザイナーの三宅一生に向かっていった言葉だ。(白洲は晩年、三宅のファッションショーにモデルとして登場したこともある。)ファッションのプロとして世界に認められた若者に、その素材の出自に照らした本当の着方を諭す大人。そんな骨太のカッコいい大人になりたくて、わざわざ4年ぐらい前のモデルを探して探して買いました。これまでも数シーズンにわたって展開されてきたこのトリプルネームのダウンジャケット、マジックテープがスナップボタンになったり(ツイードの性質上、マジックテープだとちょっとね)と年々更にこなれてきています。来シーズンあたり、オックスブリッジな気品溢れるカジュアルを、あなたのワードローブにどうですか?

2011年1月16日日曜日

three dotsの「Tシャツ:Bradモデル他」 

Tシャツ:Bradモデル他

Tシャツってホントに難しい。そんなことないと言う30過ぎの男性は、あるひとつの場合を除いて確実に嘘つきだ。女性の皆さんはこんなオトコに近づいちゃイケマセン。あるひとつの場合は後で説明する事にして、ここでひとつの証明をしたい。それは“あなたは白いTシャツにデニムパンツで、女性と出かけられますか”ということ。ね、不安になるでしょ?この証明は、Tシャツが如何に難しいアイテムかという事を表している。寒い暑いは別にして、不安じゃないとかそれでも格好いい(ホントにかっこいいか思い込みかは問わない)とかいう人に、たぶんファッションは必要ない。ではなぜTシャツが難しいのか。それはやっぱり、ごまかしがきかないからだろう。この格好になった瞬間、体型や顔の大きさ、ひいては荒れた生活までなぜかバレる。でもここで嫌な情報がひとつ。白いTシャツにデニムパンツが平気なオトコってガッツリモテるということだ。隠し事は墓場まで持っていきたいが、それでもモテたいというわがままな僕らに打つ手はないのだろうか。

そこで前述の、「あるひとつの場合」が登場する。それは、「threedots」を着ている場合だ。ここのTシャツをジャストサイズで着ているなら、間違いなくいつものTシャツ姿よりもリュクス感が出て、なおかつスタイルがよく見える。例えるならヤコブコーエンのデニムのようなアイテム、それがthreedotsのTシャツなのだ。では、なぜそんな奇跡が起こるのか。threedotsがプレミアム カットソーとしての認知を築いたきっかけにその答えがある。レディスのTシャツ、Jessica(ジェシカ)というモデルだ。 オフィシャルサイトでも“その絶妙なカッティングのUネックラインは女性のデコルテの美しさを際立たせます。”と紹介されているこのプロダクトは、装いにうるさいハリウッドセレブから絶大な支持を得た。女性のカラダは、男性のそれと比べて三次元的に非常に複雑だ。男性の場合、身長と体重とウェストからある程度サイズが推測できる(あくまでもカジュアルウェアのサイズの話だが)が、女性の場合それに個人差の非常に大きなバストサイズが加わるので、パターンを起こすのは至難。そのレディスの分野で鍛えられた技術が、メンズのコレクションでも遺憾なく発揮されているのである。袖渡り、襟ぐり、身幅、そして着丈。この4点が素晴らしいレベルでバランスされていること。それがthreedotsがもつスタイルアップ力の秘密だ。

しかも、上品で上質なオーラが漂う。その理由はなんと言っても素材と色バリだろう。袖を通した瞬間に「ああ、これいい服なんだな」としっかり確認できる素材感。ZANONEのさらっとしたアイスコットンの風合いとはまた別の、しっかりと肌を包み込む優しさがあるし、色バリに関してもシックでひねりの利いた色数が揃う。さすがは世界中のファッションピープルやハリウッドセレブが支持する逸品だと納得できる。実はファッション誌に使用されるセレブ写真のほとんどは、アフロやゲッティなどが提供するレンタルポジなのだが、こういった会社のサイトが扱う写真の中にもこのブランドの商品が多く確認できる。ここで最後の一押し。それは、こういったサイトで確認できるセレブたちの多くが“オフ”だということ。いろんな大人の都合から“オン”な露出の際には制限の多いセレブたちが、普段着として本当に着たくて選ぶ服、それがthreedotsなのだ。

2011年1月7日金曜日

カナダグース EXPEDITION PARKA


エクスペディション・パーカー

大人の服って、正直色々ハードルが高い。解ってる感があり、品がよくってなおかつ少し遊びゴコロもみせないと、小僧と一線を画す“装い”にはならない。そういう意味で大人の服って、俗にいう“良いもの”でなくてはならないのだ。でも実はここに陥りやすいトラップが有る。それは、“良いもの”=本物とは必ずしも言えないということ。例えば、3、4年前から流行っているM65フィールドジャケット。ミリタリー系カジュアル大人服の代表選手だから、アンテナがそれほど高くない人のワードローブにも収まっているこのジャケット、もともとはガチの軍服だ。でも、アメリカ軍払い下げの“キング・オブ・本物”を買い、身幅や袖幅をいじり倒して、気づけば3800円のジャケットのお直し代が20000円超え。しかもそこまでやってもノーブル感はゼロ。これには本気で凹んだが、考えてみれば当たり前。機能性とコスト重視で作られた軍服に、ワイルド感以外を望んだのが間違いなのだ。戦場でお洒落感を重視するなんてロバート・キャパ(1913〜1954  アメリカの写真家。従軍取材の際に、有名メゾンに別注した軍服を着用していたという逸話が有る)ぐらいのものだ。ノーブルなM65が欲しいならASPESIにいった方が断然話は早い。

しかし、しかしだ。極地用耐寒服として南極探検隊やエヴェレスト登山隊、カナダ・ナショナル山岳レスキューチームやアメリカ森林警備隊の公式採用備品になっているという本物中の本物なのに、日本のアパレル代理店からのオファーにもバッチリ応え、ファッション偏差値の高い別注モデルを数多く発信しているという奇跡のブランドがある。それがこのカナダグースだ。キ○タクがカ○プヌードルのCMで着ていた赤いダウンもここの製品。(※着用はスノーマントラという極地用モデルで、両脇腹に繰り返し使用可能なカイロまでついている!)ただ、街着としての使用を考えるなら、今回紹介するEXPEDITION PARKA(エクスペディションパーカー)がイチオシだ。どちらかと言えばダウンはサイジングが難しいアウターだが、そこさえクリアして(ジャストサイズより少しタイトめを選ぶと今期っぽいだろう)しまえば、あとはインナーをボタンダウンシャツとスメドレーのセーター、もしくはタートルとインコテックスあたりにするだけで、今流行りの知的熟女キラー、山○さん的ダンディなジャーナリストコーデが完成する。しかもこのブランドならではの使い勝手重視のポケットや、極地装備の矜持を静かに主張するワッペンなどのディティールが、俗にいうユニフォーム効果(婦女子にはなぜか制服がブッ刺さるというアレ)まで演出してしまう。ノーブルで知的なインナーを、ハードで高機能なアウターで覆う。これって実はすごく本質的にハードボイルドなコーディネートなんじゃないだろうか。もちろん、それが可能なのはインナーの上質さとシンクロする、服作りの確かな技術があればこそだ。

ホッキョクグマ(ポーラベア)の研究保護支援のチャリティモデルを始め、ワッペンをシックなトーンに変更したモデルや、中にはダウンベストのアルバータのように完全に日本企画のモデルも存在するなど、バラエティに富んだラインナップも魅力的なカナダグースをワードローブに加えて、リアルコヨーテファーを寒風になびかせながらボソッと「南極ってね」とかのたまえば、単なるホラ話が「優しい嘘」に格上げされるかも?!

2011年1月5日水曜日

マスターピース「Harris Tweed SLASH」


マスターピース「Harris Tweed SLASH」

程よくカジュアルで程よくストリート、なのに程よくノーブルっていう、大人なマッチングのカジュアルバッグってなかなかない。ビジネスバッグには困っていない大人の中にも、カジュアルダウンしたときにイタイ事になってる人は結構いる。
でも、大人にとってはこの「程よく」って言うのが最も大切。山男過ぎたりスケーター過ぎたりはもちろん、ワイルド過ぎたりゴージャス過ぎたりすれば品性まで疑われかねない大人のカジュアルダウン。そんなときにぴったりくる商品が多いのがバッグメーカーのマスターピース(MSPC)だ。様々な素材をミクスチャーして生み出されるここのバッグは、極めて“程よいヌケ感”がある。じつはこれはかなり大事な事で、“程よいヌケ感”を上手に演出すれば婦女子の良く言う“リュクス感”の源にもなったりするのだ。

そんなマスターピースのバッグの中でも今回お薦めしたいのが、「Harris Tweed SLASH」。その名のとおりハリスツイードを使ったメッセンジャータイプの逸品だ。ハリスツイードとは1840年代にイギリスのアウターへブリデイーズ諸島で生まれたツイード素材。ブラックフェイスとよばれる羊の羊毛を天然染料のみで染色され、手織りで織られたもので、すべての商品に織り職人のサインが入る事でも知られている。

本来、ジャケットに用いるツイード素材をバッグに、しかもメッセンジャータイプに用いるという、このメーカーらしい着想から生まれたこのバッグには、“程よいヌケ感”に加えて、もうひとつ大きな武器が備わっている。「知性的」なルックスだ。3、4年前に流行ったダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」では、主人公のラングドン教授の外見を「ハリスツイードを着たハリソン・フォード」と表現している。ハリソン・フォードが男性的魅力の象徴であるなら、ハリスツイードはさしづめ、知性とノーブルさの象徴と言ったところか。(主人公はハーヴァード大学の象徴学部教授の設定だからだ)落ち着いた知性に加えて、色バリも素晴らしい。女子からは「カワイイ」と言われるけど、同性からは爽やかに見える配色のバリエーションが揃う。

この、本来のメッセンジャーより少し小振りのバッグなら、ロンTに薄テロパーカーにダウンベスト、ボトムスはチノに白スニ、みたいな王道カジュアルをもしっかり格上げてくれる。荷物の多い人にも満足なこのワンマイルバッグに、ラングドン教授と同僚って言う事になっているマイケル・サンデルの「これからの正義の話をしよう」でも突っ込んで、カジュアルな週末哲学者を気取っちゃうというのも、「大人」な感じがしませんか?