2011年3月4日金曜日

klattermusen の「SKIDBLADNER:スキッドブロドナールジャケット」



IKEA、VOLVO、H&M、エリクソン、ハッセルブラッド。この世界的に有名な5つのブランドにはひとつの共通点がある。業種の全く違うこの5社、実はどれもスウェーデンの企業だ。他にもノーベル賞で有名な火薬メーカー、ノーベル社や、ヨーロッパ第2位の電器メーカー、エレクトロラックスなどを擁している。車好きの方にはSAAB、お酒好きな諸兄にはアブソリュートウォッカなども耳に親しいのではないだろうか。また隣国フィンランドやデンマーク、ノルウェーとともに北欧デザイン(正しくは“スカンジナビアデザイン”というようだ)の一翼を担う国で、議会で使用する書類ですら驚くほどのデザインが施されている。北欧デザインというと、ユニークな形状と素朴だが洗練されたカラーリングを思い浮かべてしまうが、スカンジナビア半島におけるデザインの本当の目的とは、機能美とシンプルさから生み出される使いやすさの追求なのだそうだ。

そう考えると、今回紹介するクレッタルムーセンのスキッドブロドナールジャケットは、間違いなく北欧デザインの生み出した名品だ。フロントを斜めに走るジッパーが印象的なデザイン(着てみると、更に角度がついているように感じる)だが、これはファッション面からのアプローチというよりも人間工学に裏打ちされた機能重視のギミックであるらしいし、他にもRECCO社の雪崩救助ビーコンタグ(広い意味でのリフレクターのような働きをするらしい)が当然の様に内蔵されていたりと、ハードな使用環境を想定したコンテンツとアイディアが詰まっている。また、非常に軽く、伸縮性に富んだ素材でありながら撥水性も実現しており、同ブランドのアイコン的アイテム“エイナリーダ”のようなコットン系ファブリックにこそ及ばないものの、蒸れ感を外に排出する能力は、他のブランドの同系モデルに比べても出色の出来だ。クレッタルムーセン(なんて覚えづらい名前!)は1984年に発足したスウェディッシュブランド。スウェーデン語で“山ネズミ”というその名の通り、登山を中心とした、まごうかたなきアウトドアブランドだ。オーナー自らミシンを踏んで(今はこんな表現をしないかもしれないが)縫い上げたものを、実際に様々なアクティビティで何十回もテストし、納得したものしかリリースしないというこだわりのブランドは、一方で環境に対する配慮が強く、ゴアテックスを一切用いないことでも知られている。(どうやら製造過程で大量の炭素系排出物を出すようだ)すべてのプロダクトが人間工学に基づいてデザイン(登山用だけに当然だが)されていて、元々ザックメーカーからの出自であることから、ウェアの他にザックへの支持も高いブランドだ。国内での価格が非常に高く設定されていることもあって(現地の2倍近くに設定されている!)数年前までは知る人ぞ知る、という位置づけだったようだが、前述のエイナリーダや、ダウンジャケットのムーニンなどのモデルで人気に火がついて、日本国内での認知が上がった形だ。

このブランド、日本国内ではなぜかおしゃれ街着系でのニーズが高いようだ。確かに若干ショート丈でタイトなシルエットであることも街着への応用を加速する。いつものマウンテンパーカーなどの代わりに使うと、かなり斬新な印象を与えるコーディネートに仕上がるのだ。それだけにこのアイテムに限っては、いつも着ているものより明るめのカラーに挑戦してみることをお勧めしたい。イエローやレッドのスキッドブロドナールをチョイスして、これからの季節ならパラブーツの白いデッキシューズとかALIFEのスニーカーなどとあわせると、キレイ目でひねりの効いた着こなしに仕上がるはずだ。マリメッコのような鮮やかな色合いとSUUNTOのような緻密な機能美が共存するこのアイテムで、冒険する心を忘れない大人な春カジュアルをあなたもいかがですか?